春巻と杏仁豆腐

歌集を中心に読んだ本の感想など。

猫を抱きながら

堀田季何『惑亂』(書肆侃々房 2015) 銀河てふ環の斷面を環の中の星より觀たり銀河人われ(p96) アルバムをめくる指は立ち止まる。そこには夢に遊び、少しユーモラスで、博識の天使の表情で、時に宇宙的スケールの思考をする、ひとりの人間がいる。この歌…

第一詩集『宇宙(そら)の箱』

2016.3 第一詩集『宇宙(そら)の箱』を上梓しました。 この世に自分の本が存在することに、感謝。 作者よりも遠くへ旅をする詩集のようで、嬉しいかぎり。 詩、それは声。あなたの。あなたという宇宙の。 澪標出版のオンラインより入手できます。 http://ww…

ぼくたちは。

山田航『水に沈む羊』(港の人 2016年) 走るしかないだらうこの国道がこの世のキリトリセンとわかれば(p50) 随分前にNHKのドキュメント72時間という番組で「オン・ザ・ロード国道16号の幸福論」という、国道16号線をたどりながら界隈で暮らす若者や深夜を…

夕照とゆくへ

黒瀬珂瀾『蓮喰ひ人の日記』短歌研究社(2015) 明日へわれらを送る時間の手を想ふ寝台に児をそつと降ろせば(p115) 第三歌集。イギリス滞在中13ケ月の歌。長女の誕生、多民族が集う土地での子育て。その間、東日本大震災、暴動が起きる。各歌に詞書。ジェ…

砂糖パンと猫

小池光『思川の岸辺』(角川書店)を読んだ。 わが妻のどこにもあらぬこれの世をただよふごとく自転車を漕ぐ(p83) 亡くなった妻への思いを詠んだ歌を中心に542首。 読み終えて、歌集一冊の時間の重みについて考える。 亡くなった妻や、家族の記憶へ思いを…